イヌイットには雪を表わす言葉が20種類以上あると聞く。雪に馴染まなければならない生活が、それらの微妙な差異やおそらくは雪に対する彼らなりの感情を伴った表現を見つけさせて、そして命名されたのだろう。
その一方で、米国人はわかめや海苔や昆布を食べないからだろう、それらは海草seaweedで括られてしまうらしい。
外壁や内壁を、いわゆる白で塗装する際に、ほんの少しだけ黄や赤を混ぜて現場で調色し、色見本を何種類か作って色決めをすることがしばしばある。漂白したような白が白々しくて(文字通り?)、あまり好きではないからかもしれない。先のブログで書いた書籍「日本の伝統色」では、牡蠣ガラから作った「純白」と言う色があったらしく、その色見本は穏やかで、静かな白である。言い換えれば、穏やかさ、静けさを伝えてくれる白である。色見本はただの印刷物であるからテクスチャーなどまったく無い。しかし、うまくは説明できないのだが、この「純白」は何かのテクスチャー(肌理)を連想させるよう強いているように感じる。
ベルリンで訪れたHamburger Bahnhof Museumは、Josef Paul Kleihuesによる駅舎の改築である。他の彼の作品にはほとんど興味はもてないのだが、この作品には自然で無理の無い穏やかな空間を感じ、その収蔵作品への興味もあって、冬のベルリンの一日を楽しんだ。
駅舎の鋳造鉄骨、花崗岩の床、アルミニウム、木製の床など、各室のスケールは大きく、テクスチャーそのままが表現されているが、この内部空間はピリピリしていず、非常に心地よい。外光を大事に扱って、かつ、ブルータルになっていないのは素晴らしかった。Donald Juddの作品群がここに居場所を見つけたように、ちゃんと納まっていた。
大きな壁面の大部分はいわゆる白のスタッコなのだが、おそらく何か特別な調色をしたのだろうと感じた。日本に戻って調べてみたら、この白スタッコは特別に作られた白スタッコであり、Kleihuesは原料や製造工程まで気にかけたらしい。